せっかく書いた遺言書が、悲劇を生む!
1.不備があったがために、誰も幸せになれないこともある?
岩城家の場合
岩城さん(仮称)は、病弱な奥さんと、遊び人の長男、そして岩城さんの真面目さをそのまま引き継いだような長女の4人家族であった。
ご主人は、万一奥さんより先に自分が亡くなるような事があった場合が不安でなりません。また遊び人の長男は定職も就かずふらふらしていることも気がかりでなりません。
岩城さんには、資産として、ご自宅・アパートをお持ちです。そして株や預貯金等です。
そこで、遺言を作成しておいて、万一に備えることになりました。
しかしながら、その遺言書には大きな欠点がありました。もちろんその事は、ご主人がお亡くなりになってからが判明したものでした。
岩城さんの遺言には、
1.自宅は、長女が相続する。 2.アパートは、長男が相続 3.株・預貯金は、奥さんが 相続する。 という内容が書かれておりました。
当然に、奥さんの面倒をみれるのは、長女しかいない。奥さんには、住まいで窮屈な思いをさせず、余生をゆったりできる現金があればいい。
そして、長男には安定したアパートの収入が入ってくるので、多少定職に就かなくても何とかやっていけるはず。ご主人の思惑通り、誰もが納得できるもののはずでした。
けれど思わぬ所からもの言いが、ついてきました。
実はアパートには、ローンが付いていて、残債がおよそ1千万円とのことでした。
この金額であれば、アパートの収入と、定職に就いていれば、何ら問題はありませんが、30半ばを過ぎてもフラフラしている遊び人では、少し風向きが変わってしまうものです。
融資元の銀行は、長女にアパートを長男に相続させるのなら、連帯保証人になってくれと相談してきました。
長女は、兄弟であるからこそ、長男のだらしなさやいい加減なところを知っていたので今回も当たり前に自分に泥を掛けられるのは、分かりきっていたことだった。
結論に至るまで、いろいろなゴタゴタがありましたが、結局長女は、長男の連帯保証人になることを承諾しました。
遺産分割が終了してから、およそ1年後。
長女は、一時家賃の口座を長男から自分の口座へ切り替えました。
それというのも、相続後借りぬ資産から家賃を長男の口座へ振り込んでもらうようにしたその月から、湯水の如く金を使い始め、生活が一気に派手になりました。この口座は当然にローンの返済に充てるべく引き落としされるようになっていますが、いつも残高不足で、担当者から長女へ連絡が来る次第だった。その度に、長女のお金から返済金を負担しなければならなくなった。
自分が家賃の管理をやらなければ、いつ支払い不能で競売されるか分からない。せっかくお父さんが残してくれた財産なのに、こんな兄のために手放してしまうことは避けなければいけない。悔しい気持ちだった。
なんとか兄を説得し口座の変更をしたものの、それ以降金の無心にくる度に、兄から嫌みを言われなければならないのか、長女もついついお父さんへの恨み言も出てきそうとのことです。
このようにお父さんの気持ちが全然反映されず、遺族の誰もその愛を気付かずに、むしろ憎しみしかない状況になってしまったのは、とっても残念で不幸な状態です。